香川県多度津町から世界へ「少林寺拳法」第三世師家、宗昂馬さんが語るふるさと瀬戸内
瀬戸内地方に関わりのある方に瀬戸内の魅力を語っていただく連載企画「ふるさとラバーズ」。
第11回目のゲストは、「少林寺拳法」の第三世師家として、少林寺拳法グループの代表を務められている宗昂馬(そうこうま)さん。
宗さんの出身地・香川県多度津町をはじめとした瀬戸内での思い出やおいしい食べ物の話、少林寺拳法や多彩な趣味についてお話を伺いました。
━━ 宗さんはずっと香川県多度津町にいらっしゃったのですか?
高校2年生くらいまでずっと多度津町で育ちました。
その後東京の高校に移り、卒業後にはイギリスに半年、アメリカに4年半ほどいました。
アメリカから戻ってきてからは、大阪で料理の勉強をしたり、IT関係の仕事をしたりしながら過ごしていました。
これまでいろんな業種のアルバイトや仕事をしてきましたね。
この組織に入って東京に勤務してからは2ヶ月に1回は多度津町に戻ってきてはいたのですが、6年くらい前にまた多度津町に住み始めました。
━━ いろんな場所でいろんなことをされてきたのですね!
やりたいことがいっぱいありまして(笑)
趣味もざっと思いつくだけで50はあります。
とにかく生きていることが好きなんです。大きく聞こえちゃうかもしれないですけど(笑)
人生を誰よりも楽しんでいる自負はあります!
━━ それでは、生まれた場所でも現在お住まいの場所でもある香川県多度津町のいいところをお聞かせください。
まず、多度津町を語る上で少林寺拳法発祥の地ということはもちろんですが、忘れてはならないのがJRの存在と造船が盛んであるということですね。
70年ほど前までは多度津町が四国の港の玄関口だったんです。多度津港からものが入ってきて、四国に流通していったんですね。東京で言う築地のように栄えていました。
今でも当時の建物が残っていたりするんです。そこがいいところでもあり、親しみやすいところですね。不安なことや世間の騒がしさを忘れることができるような時間の流れが多度津にはあります。
JRの予讃線と土讃線が重なって岡山から愛媛、高知に行くには多度津を経由しないと行けないですし、海とのアクセス、電車でのアクセス、土地柄、すべてにおいて恵まれている場所だと思います。
香川県はよく「うどん県」と言われますが、多度津にも有名なうどん屋さんが結構あるんです。隠れた名店ですね。フルーツや野菜、海の幸や骨付鳥など、食べ物はなんでもおいしいですし、近くのスーパーで安くて新鮮なものがなんでもそろっちゃうんです。
時間を忘れてのんびり過ごしたいなって方にはもってこいの場所だと思っています。
━━ その中でも多度津町のオススメの場所といえば、ズバリどこになりますか?
「桃陵公園(とうりょうこうえん)」という金剛禅総本山少林寺の裏にある、山まではいかない丘のような場所なんですが、自然に溢れていて桜がキレイで好きです。
そこから多度津町が360°見渡せますし、讃岐富士なども見えるんです。小さい頃はほんとにこういった多度津の山でどろどろになりながら秘密基地を作ったりして遊んでました。
当時はまだそんなに開発もされていなかったので、古い神社がいっぱいあってその周りでよく走り回って遊んだりしていました。
あとは、金剛禅総本山少林寺の敷地内にある大雁塔(だいがんとう)ですかね。
五重の塔みたいな建物で、今は一般の方はなかなか入れない建物になっているんですが、中は少林寺拳法の歴史資料館になっているんです。
一番上には少林寺拳法創始者である祖父の分骨が納められているのですが、小さい頃はよくそこに潜り込んでは景色を楽しんだりしていましたね(笑)
━━ 少林寺拳法について、どのような武道であるかをお聞かせください。
少林寺拳法は1947年10月25日に創始され約74年が経っています。
私達はよく「少林寺拳法は単なる武道やスポーツではない」と伝えています。少林寺拳法は勝敗を求めていないんです。
少林寺拳法というと、よく武道という側面で捉えられがちなのですが、私達は「人づくりによる国づくり」というテーマをもって活動をしています。
少林寺拳法の修練を通じて、自信・勇気・行動力そして慈悲心を養い、人間としての可能性を信じて周りにいい影響を与えていくことで、よりよい社会を作っていこうということが、本当に伝えたいことなんです。
創始者である私の祖父、宗道臣が中国の戦禍で過ごし戦後日本に帰ってきたときに、本来の日本人が持っていた日本人らしさが完全に失われている惨状を目の当たりにして「このままではいけない」ということで、それまでに学んでいた数多くの古武術や武道など、また、中国にいたときに中国嵩山少林寺の陳良の師に当たる、北少林義和門拳20代の師父文太宗の跡目を継いだ経験を活かして少林寺拳法を創始しました。
当時の日本はパワハラなどの概念もなくモラルもない、暴力、金銭的などのダークな部分が多い「力」というものがすごく存在感があった時代です。
もちろん祖父も「力」という上ではかなりの達人レベルの技術を持っていたのですが、いきなり教えや良いことばかり言っても人は集まりません。
なのでまずは「喧嘩の仕方を教えてやるから喧嘩に強くなりたいやつは集まってこい!」という感じで少林寺拳法は始まっているんです。
そして、その中で「有り余った力ばかり鍛えてどうするんだ」「突き(パンチ)が早くなったことが何になるんだ、その力をもっとまともなところに使わないか」と教えていきました。
少林寺拳法って今となっては、国会議員や芸能人、企業の社長から小学生、主婦の方まで様々な方に学んでいただいています。
そういう方々が少林寺拳法という共通点をもって交流できる場でもあり、なおかつそれぞれ価値観が多様化することが認められている時代です。
でも価値観が一方的に暴走してはいけないし、なぜ家族がみんな助け合うのかといった考え方や、人間が人として真っ当に生きるためのことを学んだり助け合ったり楽しんだりする場というのが少林寺拳法という武道なんです。
決していきなりこの国を新しい何かに変えようということではありません。少林寺拳法の教えには「理想境」という言葉があるのですが、例えば私が「明日から多度津町をいい街にします!」と言っても不可能だと思います。
しかし、日々の生活の中で家族や友人、ご近所さんを思いやり、自分のできることを見つけて実践することで、身近な社会からより良くしていくことは今からでもできることだと思います。
それを世界中のみんなが実践したなら、世界は良くなるのではないかということです。
そうした日々のことを無視せずに、自分を見つめ直し、人としてどうあるべきなのかということを修行を通じて追究し、様々な失敗や葛藤をしながらも、みんなで支えあってより良いものを作っていこう、というのが少林寺拳法の考え方ですね。
少林寺拳法は「組手主体」といって2人1組で修練することを基本にしているので、直接的な接触を避けるためにこの一年は活動そのものがはばかられました。
それでも講習会や大会などでは結構早くオンライン化を実施しまして、実際の組手としてのやりとりは無いながらもオンラインでできることはオンラインでやっています。
また感染対策マニュアルを埼玉医科大学の教授陣と一緒に開発して独自のものを作ったり、できる限りの感染対策をした上で活動はしています。
このコロナ禍でこそ繋がりや助け合いが必要になると思うので、私達がそういうことに対して社会に提供できることがあればどんどん発信していきたいと思っています。
━━ 少林寺拳法は今や全国、世界に広まっていますが、これまでに訪問した他の瀬戸内地方で印象に残っている場所はありますか?
瀬戸内地方はどこも好きですが、四国でいえば愛媛県ですね。
私がマリンレジャーも好きで、素潜りや釣りなどもいろいろとするので、宇和のきれいな海が好きです。
あとは徳島県ですね。以前、有名な阿波おどりの連に、私たち少林寺拳法グループ連として参加したことがありました。
以来、中国との交流の際や海外の行事などでお披露目することもあり、みなさん日本の伝統を見て喜んでくれます。
それと岡山県です。祖父の生まれが岡山県の美作(みまさか)です。祖父の記念館があり、祖母とよく行った思い出の場所です。
でもやっぱり香川県がいいですね…(笑)天災がなにもないんですよ。
地震もほとんどないし、台風でも多度津町だけ晴れていることがよくあるんです。地下水もあるので、香川県の最大の敵である水不足もないんです。
━━ 瀬戸内地域の中で、一番好きな食べ物を教えて下さい。
もちろんうどん好きです。「根ッ子」といううどん屋さんによく行っています。
ビニールハウスでできているんです。営業時間は朝10時半から午後2時までと短いんですけど、本当に美味しいです。
うどんのコシがナンバーワンです。天ぷらとの組み合わせも最高です。うどんの好みはそれぞれですが(笑)
うどんは、高校生の頃にだいたい1日に8玉くらい食べてましたね(笑)だからよく病気だって言われてました(笑)
でも安いんですよ、1玉50円ですから!あとは醤油うどんっていって、出汁醤油みたいなものをかけて大根おろしとレモンだけみたいなうどんも結構おいしくて食べていました。小中高はうどん脳になってましたね。
それとやっぱりフルーツ系ですかね。ぶどうとか、今香川県でもマンゴーもあるんですよ。あとは「讃岐ゴールド」というじゃがいもみたいな大きなキウイとか。柑橘系は四国にまたがっているので何でも入ってくるんですよね。それで香川県産がどんどんでてきてパパイヤやドラゴンフルーツなど、南国系のフルーツもたくさんあります。
あとは骨付鳥。「一鶴」というお店がありまして、この間YouTubeでも出させていただいたのですが、骨付鳥は第一ですね。
以前働いていたこともありました。留学していた時はうどんと骨付鳥が恋しくてよく悩まされました(笑)
━━ 骨付鳥は「おや」と「ひな」どちらが好きですか?
私は両方です(笑)幼少期はひな鳥が好きでした。中学生から22歳くらいまではおや鳥をよく食べていて、そこからは両方になりました。
「一鶴」は老舗で、関東であれば横浜にもあって東京都内にも骨付鳥のお店が結構出てきているので是非食べに行ってみてください。
焼き方一つで全然味が違うんですよ。浅草にある「一之亀」というお店もおすすめです。
━━ 宗さんは料理が好きということなのですが、ご自分ではどのような料理を作られるのですか?
鳥でいうと鳥の育て方からこだわってまして、直接出荷しているところからオーダーを入れて取り寄せています。それをたたきにするなどして料理しています!
調味料でいえば毎年柚子胡椒を作っています。実は大阪の調理師学校に入っていたんです。そこでいろいろ学んだり、日本料理のお店で修行したり様々なことをしてきましたね。
━━ 最後に、少林寺拳法の素晴らしさと、少林寺拳法で日本全国や世界を巡って改めて瀬戸内、多度津町のここが素晴らしい!ここには是非来てほしい!と思う場所などをみなさんへのメッセージをお願いします。
少林寺拳法の素晴らしさは、その本質をご理解いただければ分かっていただけるのではないかと思います。実は武道としての少林寺拳法はごく一部を指しているに過ぎず、それを通じて価値を高められる可能性がまだまだあると思っています。
私自身も昔からこの組織で生まれ育ってきてますけど、少林寺拳法が主役だとは思っていません。
少林寺拳法はあくまでもきっかけであって、その人の人生が主役だと思っています。その主役にほどよいスパイスを与えることができれば幸いです。
日頃が大事だとか、毎日コツコツ積み重ねることが大事というのは結構皆さん言われているんですが、本当にそれを意識して行動に変えている人って少ないのではないかと思います。
それを実践する場が少林寺拳法だと思っているので、少林寺拳法をこれから始められる方は、是非そういう観点も持っていただけたらと思います。
これからも、私のスキル、特技、性格などを活かして、少林寺拳法の世界をより華やかにしていきたいと思うのでご期待ください!
あとは多度津町そのものは、美味しいお店、桜と少林寺拳法とJRの電車が思い浮かびますが、香川県としては魅力あふれる食べ物、海、山、なんでもあります。
今は来られることは難しいかもしれませんが、ふるさと納税の返礼品を通じて魅力的な産品を楽しんでいただけたらと思います。是非いつか来て実感していただきたいです!
その際には、ぜひ金剛禅総本山少林寺にもお立ち寄りいただければ嬉しいです。
━━ ちなみに、宗さんのニックネームは「クマさん」とのことなのですが、プロフィールでご紹介してもよろしいでしょうか?(笑)
はい!大丈夫です(笑)
私がアメリカにいた時の話なのですが、私の名前が「昂馬」、アルファベットでは「KOUMA」で、アメリカの人だと発音が「クーマ」になるんですよ。
それを聞いた日本人が「あ、クマって人なんだ、見た目もクマみたいだ」ってことでニックネームがくまさんになったんです(笑)
なので20年くらいクマさんとして生きています!
━━ 楽しいエピソードが聞けてよかったです!(笑)ありがとうございました!
はい!ありがとうございました!
宗昂馬さんプロフィール
1985年1月生まれ。香川県多度津町出身。
2020年1月、少林寺拳法第三世師家となる。同時に少林寺拳法グループ代表、一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY代表理事、少林寺拳法世界連合会長に就任。
イギリス、アメリカへの留学経験もあり、各種業種での経験も豊富。思いつくだけで50はあるという趣味をもとに、2020年11月からYou Tubeチャンネル「志道チャンネル」をスタート。
調理師学校に通っていた経験を活かした料理はもちろん、IT業界に携わっていた経験を活かしたガジェット紹介、少林寺拳法を活かした健康トレーニングなどを紹介。
「生きることが好きなこと」である宗さんが毎日の生活にひとつまみのワクワクとスパイスを届けている。
ニックネームは「クマさん」。